2023-06-30

中国事業からの撤退決断
スペシャルインタビューで明かす
決断の背景と学び

RELEASE

【INTERVIEW】

2023年6月30日
​亞星通股份有限公司(​STAR TO ASIA CO.,LTD)

 

 【INTERVIEW】
中国事業からの撤退決断
スペシャルインタビューで明かす決断の背景と学び



 ​亞星通股份有限公司(本社:台湾台北市松山区、董事長:藤原徹平)の連結子会社である上海星到亞市場營銷策劃有限公司(支社:中国上海市静安區、董事長:藤原 徹平、以下「スタートアジア上海)は、2017年9月の設立以来、約6年に亘り日系通販企業の中国進出総合支援・中国シェア最大の天猫国際(Tmall Global)を中心とした越境モール支援事業を行ってまいりましたが、2023年6月30日をもって、中国事業から撤退することを決定いたしました。
 
 今回はスタ―トアジアを代表するお二人に、中国進出時から現在に至るまでの道のりや撤退の決断の背景についてお話いただきました。
 

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​亞星通股份有限公司 董事長 藤原徹平
上海星到亞市場營銷策劃有限公司 総経理 蔡 欣樺
※経歴はインタビュー時点のものです。



―上海事業(星到亞)の撤退が決まりました。
 なぜそのような決断に至ったかや、そこから得た学びなど含めて、皆さんにお伝えしようと考えています。


藤原
ーこういうインタビューを通じて、良いことだけじゃなくて厳しい事実もしっかり伝えるのは、うち(スタートアジア)らしくて良いと思います。中国撤退は、Sherry(蔡欣樺・上海総経理)とかなり長い間話し合って来たうえでの判断でした。今日のインタビューではありのまま話せればと思います。


―よろしくお願いします。まず、撤退が決まった時のお二人の感想は?

Sherry
ー1年以上前から藤原さんと議論して撤退のために準備してきたので、今はだいぶ落ち着いていますが、振り返れば6年間の想いが詰まっている事業を撤退させると決めた時は、心の底から惜しかったです。

藤原
ー僕の感想は、ひとえに中国の難しさを実感させられたという感じです。Sherryと同じく悔しさがありました。ただ、事業は始まりもあれば、終わりもあり得るものだけど、Sherryという優秀なメンバーに色んな成長の機会を与えられたという点では挑戦して良かったというプラスの気持ちもあります。


―なぜ撤退という選択をしたのでしょうか?

藤原
ーあれは昨年(2022年)の5月頃だったかな、ひとつはコロナの長期化がきっかけでした。当時の上海は3~4ヵ月もロックダウン(都市封鎖)していて、明らかに上海のメンバーがきつそうだったのが分かっていたし、事業もモール内マーケティングを支援していたけど、広告コストも異常なくらい高騰していてクライアント成功への道筋も見えてこなかった。Sherryも苦しそうにしていたし、このまま上海のメンバー達に辛い思いをさせてしまってはいけないなと感じました。

それと事業撤退はやっている本人はなかなか自身で決められないものだから、そういう点では自分(藤原)がちゃんと決断するべきだと思いました。


―それを受けてSherryは率直にどう感じましたか?

Sherry
悔しいなかで正直、ホッとした気持ちもありました。自分はもともと諦められない性格なので、他の人から言ってもらえないとやめられなかったと思います。当時、自分は「負けた」という気持ちがすごく強かったんですが、今から考えるとそのタイミングで撤退すると決めた事はいい決断だったと思います。

諦めることは勇気もいることだし、やめるということは次の段階に向けて、何かを始められることでもあるので、長期的に考えると人生にとっては良いことだと考えられるようになりました。
 

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―「海外ビジネスの難しさ」について、どのように感じますか?

Sherry
ー海外での0→1は事業サービスだけでなく、会計やシステム、人の採用も全て現地で揃えていかなければいけない環境下なので、成功のストーリーが見えない中で模索していくことは、特に外国人(経営者)にとっては本当に難しいことだと思います。

6年間上海にいて今から振り返ると、あの時こうしていればもっと早く成功できたのではないかと思うことが沢山あります。もし戻れるなら、初期の段階から専門性の高い詳しい人に頼ったり、アドバイスを聞いて事業の方向性を決めるとか、事前調査や事前準備をしっかりすると思います。

藤原
ーたしかに、Sherryの言うとおり海外で0→1を作っていく時には、人脈や現地の情報を必要とするということがポイントだと思う。あともうひとつは「ダメだった時に事業のピボット(方向転換)ができるかどうか」。最初に考えたビジネスがそのまま上手くいくとは限らないので…。上海事業も、一番最初はアフィリエイト事業から始まり、二度目は自社ドメインEC支援、三度目はモール内マーケティングと色々と試行錯誤をしてきたと思うんだけど、安定するまで仮説を立てながらサービス転換をやっていかないといけないと思います。最初から「これで行くんだ!」とそのサービスにこだわり過ぎると上手くいかないことがけっこう多い気がします。

Sherry
ーあとは、自国・自社での成功体験を海外にそのまま持っていって、必ず成功するわけではないので、現地パートナーや社員の話を聞きながらローカライズしていくことも必要だと思います。

中国の場合だと、最初は自社ECとか定期コースとかを考えてましたけど、決済ルールの違いや法律の問題で日本や台湾と同じようにできなかったりして…。どういう風にサービスを現地の慣習に合わせていくのかという点で、調整力や柔軟性も成功のための大事な要素だなと感じました。

藤原
ー確信を持っていえることは、この撤退はSherryの責任や能力不足ではないということ。会社のエース人材のSherryを送り出しているわけだから、Sherryでだめだったら誰がやってもだめと判断していたからね。

ただでさえ難しい海外事業は、会社で一番優秀なメンバーを送り出すことが大事だと思います。それで成功の半分くらいの要素が決まる感覚です。このメンバーがやってもダメなんだったら仕方ないなと思えるメンバーを出せるかどうかということが、海外ビジネスでは大事な要素だと感じます。それでも難しかったのが中国でした。

Sherry
ー中国は海外の中でも独特な市場だし、複雑さにおいては他の国にはない困難があると思いますね。


―中国でありえないような、突発的に起こってびっくりしたことはありましたか?

Sherry
ーもう、たくさんありますけど・・(笑) 。ビジネスの基本であるような契約を守ること自体が難しいような、また詐欺みたいな行為をやる人も多いということに衝撃を受けました。契約書を交わしても、契約内容を守らないとかありますし、制度関係でいうと法律がコロコロ変わって突然商品の輸入ができなくなったり、外国人の銀行口座が作れなくなったりとか色々ありました。ただ学びもあって、変化がすごく激しい環境なので自身のマインドも常に臨機応変に調整していかなければならないという意味で耐性がつきました。


―(撤退決定後)対クライアントや、社員の皆さんへの向き合い方は?

Sherry
ークライアントに迷惑をかけたくないというのが一番でした。自社の撤退でクライアントの事業に影響が出ないように、パートナーを見つけて半年近くかけて引き継ぎをやったり、慎重に事業整理をしてきました。とにかく終始なるべくご迷惑をかけないように調整しましたがそれでも不足なこともあっただろうと思い、今でも申し訳ないという気持ちがあります。

対メンバーに対しては、上海オフィスは多い時には30人近くになりましたが、スタートアジア上海の良いレピュテーションを残したいという想いで向き合いました。長いメンバーだと4年近く一緒にやってきて、色んなところで支えてくれました。撤退についても時間はかかりましたがメンバー達に理解してもらうために、丁寧に回数を重ねて説明をしてきました。


ー上海を立ち上げて6年、事業立ち上げから撤退までに得た学びは何ですか?

Sherry
―撤退しておいて言うのも何なのですが、どこを押さえれば成功に近づくのかという要点がなんとなく分かったことでしょうか。私自身が成功の要素を因数分解してみると三つで、一つは市場を読む力、もう一つは人を巻き込んで行動を起こさせること、最後はリーダー育成や制度を含めた組織づくり、じゃないかと思います。それらが経験の中で少しでも身につけられたことは本当にいい学びでした。

藤原
ー逆に心残りになっていることはあるのかな?

Sherry
―さっきも言いましたが、私自身なかなか諦められない性格なので、撤退を選択したこと自体にはまだ悔しい気持ちを持っています。ただそれが今は、何か次の新しいものをつくっていくんだというモチベーションになっています。


―悔しい気持ちも残しながら、今後、どんな姿を目指していきたいですか?

Sherry
―この6年は「起業」の経験をさせてもらったので、次は別の国で「事業の構造」を時間をかけて理解していきたいと思っています。その先はまたもう一度、どこかでチャンスがあれば自分で起業するんじゃないかと思いますね。

藤原
ー事業は上手くいくときもあれば、いかないこともあるし、でも挑戦し続けるというのが重要なんだろうね。Sherryは自分で手を挙げてチャンスを掴んで、他の人にはやってないことをやってきたでしょう。その行動力と自ら積極的に動いていく力があったら、あとは事業内容や、やる国が変数にはなってくると思うけど、これまでの得た経験をもって自分自身を信じてやって行けば、必ず成功するんじゃないかなと思います。

Sherry
ーありがとうございます、また一緒にやりましょう!ただ先に少し休ませてください(笑)
これから何ヵ国か回って自分が次に行う事業や身を置く市場を見てきます。

藤原
ーSherryは退任というかたちでいったんスタートアジアから離れるけど、引き続きしばらく実務サポートをしてもらえると聞いているので安心してます。あと仕事の関係だけじゃなくて離れても生涯の友達みたいな関係でいれるしね。
また一緒に仕事しよう!

Sherry
ー新卒で入ったばかりの何の経験もない私に、事業の立ち上げや経営を任せてくれて感謝しています。また、関わって頂いたクライアントやパートナー、社員のメンバーにも申し訳ないと思うと同時に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。

 

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<総括>弊社代表、藤原から皆様に向けて

 2017年から始めた中国事業を2023年6月末をもって終了することになりました。結果としては、事業撤退という悔しい判断となりました。クライアント様やパートナー様、社員の皆さんにご迷惑をおかけしたことをあらためましてお詫び申し上げます。残っております実務について最後まで責任をもって対応してまいります。

同時に、チャレンジしたことで得られたものもたくさんありました。ある尊敬する経営者の「挑戦は、失うものより得られるものの方が多い」という言葉を思い出しました。挑戦しないと失敗も大きな成功も得られないと思います。

弊社スタートアジアは今後も支援するクライアント様の海外事業成功のため、新しい価値創造のためチャレンジし続けてまいります。
引き続き、ご支援の程よろしくお願いいたします。


「中国事業撤退のお知らせ(RELEASE)」はこちらから


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